教育心理学研究
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気晴らし方略の有効性を高める要因
プロセスの視点からの検討
及川 恵
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2002 年 50 巻 2 号 p. 185-192

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抄録

気晴らし方略は, 失敗すればさらに気分が悪くなり, 非効果的な気晴らしの持続, つまり気晴らしへの依存が生じる可能性もある。本研究では, 適応的な対処方略の使用を促進する介入の示唆を得るために,「どのように気晴らしを行うか」という視点に注目した。はじめに, 先行研究の知見からは不明瞭であった気晴らしの意図と結果の多様性に焦点を当て, 実際の気晴らしのプロセスについて情報収集を行った上で, 質問紙を作成, 実施した。次に, 仮説と尺度構成の結果に基づき, 気晴らしのプロセスに関するモデルを構成し, 共分散構造分析による検討を行った。分析の結果,(a) 気晴らしに集中できないほど気分悪化が強まり, 気分悪化が強まるほど気晴らしへの依存が強まること,(b) 気分調節の自信は気晴らしへの集中を高め, 気分悪化を弱めること,(c)気晴らしの意図には目標明確化志向, 気分緩和志向, 無目標という多様性があり, どのような意図で気晴らしを行うかが集中の程度や結果に影響を及ぼすことが示唆された。プロセスの視点から検討することにより, 気晴らしの依存に至らずに効果的な気晴らしを行うためには, 気分調節の自信と集中, 目標明確化志向に注目した介入が有効であることが示唆された。

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© 日本教育心理学会
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