教育心理学研究
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原著
養育・しつけが反社会的行動に及ぼす弁別的影響
—適応性を考慮した社会的情報処理による媒介過程—
吉澤 寛之吉田 琢哉原田 知佳浅野 良輔玉井 颯一吉田 俊和
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2017 年 65 巻 2 号 p. 281-294

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抄録

 先行研究においては, 養育者の養育や子どもの養育行動の認知が適応的側面と不適応的側面という両方の社会的情報処理を媒介して反社会的行動を予測するメカニズムが検討されていない。本研究では, 養育者の養育態度は実際の養育行動として表出され, 子どもがこうした行動を認知することで養育者の養育態度に関するイメージを表象し, その表象が適応的, 不適応的な社会的情報処理を介して反社会的行動に影響するとする仮説を検証した。中学校1校の327名の中学生(1年生193名, 2年生79名, 3年生55名)とその養育者(母親303名, 父親19名, その他5名), 大学2校の471名の大学生とその養育者(母親422名, 父親40名, その他9名)からペアデータが収集された。子どもと養育者は, 子どもが幼少期の頃の養育としつけについて回答した。子どもからは, 社会的ルールと, 認知的歪曲や規範的攻撃信念による反社会的認知バイアスについても測定された。大学生は高校時代の反社会的行動の過去経験を報告した。構造方程式モデリングを用いた分析により, 中学生と大学生のサンプルの両方で本研究の仮説モデルに整合する結果が得られた。本知見から, 養育者は自らの養育行動が意図した通りに正しく子どもに認知されているか確認する必要性が推奨された。

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© 2017 日本教育心理学会
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