Trends in Glycoscience and Glycotechnology
Online ISSN : 1883-2113
Print ISSN : 0915-7352
ISSN-L : 0915-7352
ヒト唾液α-アミラーゼグライコアイソフォームの生成とエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼHS
Kazuo Ito
著者情報
ジャーナル フリー

2006 年 18 巻 99 号 p. 73-84

詳細
抄録

我々は、ヒト唾液中において、唾液α-アミラーゼファミリーA (HSA-A) から糖鎖を遊離し、唾液α-アミラーゼファミリーB (HSA-B) とする酵素がエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼであることを明らかにした。そして、本酵素をエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼHS (エンドHS)と命名した。エンドHSは、アスパラギン結合型糖鎖のうち、コンプレックス型糖鎖に特異的で、糖鎖の還元末端側のGlcNAcに結合する Fuc 残基の存在にかかわらず、2、3、4本鎖コンプレックス型糖鎖を、ネイティブな糖タンパク質、糖ペプチドおよび糖アスパラギンから遊離させる。また、エンドHSは、遊離したこれら糖鎖を、様々な単糖に転移する。さらに、我々は、2ヶ所の糖鎖結合部位に糖鎖を結合しているヒト唾液α-アミラーゼを見出し、ヒト唾液α-アミラーゼファミリーC (HAS-C) と命名した。HSA-CはHSA-AやHSA-Bと同様の抗原性を示し、2本鎖コンプレックス型糖鎖を2分子結合している。HSA-Cは、エンドHSの作用を受け、HSA-Aを経てHSA-Bに変換した。このとき、エンドHSの作用を受けて、HSA-Cを構城するマルチプルフォームのすべてが、HSA-Bを構成するマルチブルフォームへと変換した。HSA-CおよびエンドHSの存在と、HAS-CがエンドHSの作用を受けHSA-Aを経てHSA-Bとなることから、ヒト唾液α-アミラーゼは、まず、2ヶ所の糖鎖結合部位に糖鎖が付加され、HSA-Cとなって唾液中に分泌される。その後、エンドHSの作用を受けて順次糖鎖を失い、HSA-AやHAS-Bのような糖鎖不全によるグライコアイソフォームが出来上がっていくものと考えられる。

著者関連情報
© FCCA, Forum; Carbohydrates Coming of Age
前の記事
feedback
Top